槍の穂先を極め、山荘に戻り疲れた体を癒す私たち。
その後も風雨は一晩中続き、
日付が変わり17日(月曜日)を迎えても天候は変わらなかった。
予定では、今回のコースの核心部、「大キレット」を通過するはずだったが、
ただでさえ危険性が高いと言う大キレット。
この天候ではもはや通過は絶望的である。
それはメンバー4人、口にださずとも誰もが思っていたことだろう。
だが、なぜか私たちは南岳に向かい出発する。
僕の頭にもこのまま槍沢を下りて下山という選択肢はなかったように思う。
天候回復という一縷の望みに賭けていたのだろうか?
それとも高山病で頭がおかしくなっていたのだろうか?
とにかく、下山せず、稜線上を南岳に南下をはじめた時、
私たちの迷走が始まった。
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